第25回ザッカデザイン画コンペティション

25周年特別企画
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ザッカデザイン画コンペ25周年記念特別企画

このページでは、25周年を記念して設けられた豪華な新規特典の様子やゲスト審査員へのインタビュー企画など、今年のコンペの魅力についてご案内します!

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ゲスト審査員へのスペシャルインタビュー
林きょうこさん プロフィール

Coquette Designer/Porte de reve Designer/Coquette株式会社 代表取締役社長
(株)資生堂にて商品開発業務を経験。退社後は、フリーとして企業のバッグ企画・デザインなどを行いながら、エスモードジャポンにてデザイン全般を学ぶ。同校卒業後はバッグ企画、製作会社に入社。2004年6月よりオリジナルバッグ製作(Coquette)を本格始動。年2回のコレクションを発表し、全国のセレクトショップにて展開中。

林きょうこ
■インタビュー【Part1】  ■インタビュー【Part2】はこちら

─ 当コンペで受賞してから12年経って、今回審査員として戻ってきていただきましたが、まずは審査員としての意気込みをお願いします。

林:まずはじめに言いたいのはデザインが優れている事とブランドを続けるということは別ものだと言う事です。
私はブランドを続けて今年で10年になります。その10年の中で得た知識や経験をもって少しでも役に立てればと思い、今回審査員を引き受けました。
私としては、日本の優れた職人の技術をリスペクトして一緒に日々制作している以上、将来同じように強い信念をもって世の中に送り続けてくれる仲間が選ばれればなと思っていますが、これはデザインコンペでありますので私自身バッグデザイナーということを忘れさせてくれるような美しい作品を期待しています。

バッグデザイナーの林さん─ 林さん自身もコンペの受賞者としての経験があると思いますが、受賞作品を描かれた時、どんなところに気を付けていましたか?ポイントがあれば教えてください。

林:デザイン画のコンペということでしたので、画として美しいものを描こうと思っていたと思います。

─ では、プロのデザイナーとして活躍されている現在、デザインをする際に注力しているのはどんなところですか?

林:私は自社ブランド商品のデザインをしているので意図が少し違うかもしれませんが、サンプルや商品を作る職人に伝わるデザイン画になっているかという点を重要視して描いています。

─ 作り手にデザインの意図が伝わりやすいデザイン画ということでしょうか?

林:そうですね。世の中にない商品を作る訳ですから、デザイン画から出来上がりの最終イメージを職人と共有できるかが大切なのです。

─ 具体的にはどのようなところに気を付けていらっしゃいますか?

林:完成形やイメージ、例えばバッグを持った時のシルエットなどは描きません。職人とコミュニケーションを取りながら商品を作っていくので、出来上がりのイメージがわかるよう、実寸を入れて、それを基に型紙が起こせるくらいのレベルの画を描きます。
これは私のやり方で既にコケットの傾向を分かってくれている方とのやりとりなので、コミュニケーションが取り易い方法、例えばデッサンも一緒にあると良いかもしれませんね。

─ ありがとうございます。それでは以上のことを踏まえて、今回審査員としてデザイン画を審査する際に一番注目したいのはどのようなところですか?

林:デザイン画を通してコレは売れる!という感じがするかどうかです。画として美しいものが前提ですが、画で終わってしまうものではなく、履いたり、持ったり、身につけたりしたところを想像した時に商品として成立し、身につけた人がキレイに見えるかどうかを重要視します。

バッグ─ 特に今回林さんに独断で選考していただく「審査員賞」がありますが、どのような作品を選びたいですか?

林:これは台東区が主催していることでもありますし、台東区の職人とデザイナーが今度繋がる作品であって欲しいので、商品化を前提に審査するつもりです。世の中に存在していないデザインであり、また作り手(職人)に高い技術力を委ねて完成するもの、デザイナー、作り手の双方がアイデアを出し合い、高いレベルで実現の可能性があるものを選びます。
デザイン画を見て、商品になった時の様子を簡単に想像できるような作品ではなく、その少し先が見えるものを選びたいです。
つまり「少し作るのが難しそう、でも製作にチャレンジしてくれるところがあれば素敵な商品になりそう」とイメージを膨らませることのできる作品を期待します。

─ お話を伺っていると林さんは職人さんと一緒に商品をつくっているという意識が強いように思いますが、職人さんとはどのようにお付き合いをされていますか?

林:今お願いしている職人さんとは付き合いの長さもばらばらですが、全員と最初から細かく話し合いをして商品を作り上げていきます。彼らからは、 キレイに見える縫い方など表面的なデザイン以外の「仕様」の部分でアイデアをもらうことが多いです。

─ 出来上がった商品やサンプルに対して納得いかない部分があった時は、どうしていますか?

林:はっきりと言うようにしています。私のイメージしたものが伝わらなかったのだから、わかってくれるまで話さないといけません。
でも、実は私も最初は言えなかった(笑)。つくってくれるところがようやく見つかったばかりだったので、(委託先を)失うのが怖くて、どこまで職人の領域に立ち入ってよいのかわからなかった。
当時は納得いくまでやり合うべきだったと後悔しています。今では、信頼関係があるのでそういう事は全くないのですが。

─ ここからは、林さんご自身のデザインプロセスについて少し詳しく伺いたいと思います。
まず日常的にどのようなものから創作のヒントを得ていますか?

林:色です。国内外問わず訪れた土地での空の色、光の強さ、植物や野菜など自然界に存在する様々な色がインスピレーションになります。
例えば今年の春夏のコレクションのテーマは「残像」です。コルシカに旅行に行ったときに光の強さによる色の見え方の違いに感銘を受けました。残像のように一瞬のうちに記憶に残るものを作りたくて、それをコンセプトにしました。

Coquette─ 使用される素材が革なので、希望の色にするのは難しそうですね。

林:色は革の工場に直接出向いて、納得いくまで職人さんにかなりしつこく訴えます。
革も言ってみれば天然のものなので、常に同じ状態(色)の革が揃う訳ではなく、色の加減は最終的には職人さんの腕次第。
万が一希望と少しでも色が違うものを「コレでいいです。」と言ってしまうと「決定色」の基準が変わってしまいます。
職人さんが私の希望と違う色にしたから売れなかったでは話になりません。責任は自分にあります。最終的なジャッジは私ですので基準がぶれたり甘くなると(自分だけでなくブランドに携わる)皆に迷惑がかかりますからね。
お陰で「また来た」「もう来なくていいよ」が毎度の挨拶です(笑)。

─ インスピレーションが浮かんでから、それを実際にデザインに落とし込んでいく過程について教えてください。特にデザイン画として表現する際に必要不可欠な要素について教えてください。

林:すぐにデザイン画は描かず、少し温めてみたり、落書きのようにノートに書き留めたり。たまにノートをパラパラと見直して少しずつイメージが固まり、最終的には自分が欲しいと思ったもののみをサンプルにする為にデザイン画を描きます。
先ほども言いましたが、私のデザイン画はイメージを職人と共有できるかが重要なので、デザイン画から型紙が起こせるサイズ、仕様がわかることが必要になります。

<Part2へ続く>

以上、ゲスト審査員林きょうこさんへのインタビュー前篇でした。
後篇では林さん自身がキャリアを形成する中で学んだこと、現在から過去を振り返っての等身大のアドバイス、そしてご自身も起業されている産地・台東区についての思いを熱く語っていただきます。コンペへの応募を検討している方だけでなく、アパレル業界で働きたいと思っている方、デザイナーの仕事に興味のある方、必見です!